母音+R 2

2005/3/30

Bird →Talさんの補足

 

私の掲示板の#3703にbirdの発音の5つのケースについて、Talさんが音声学的な解説を入れて くれました。ちょっと難しいのですが、引用します。、私のもとの1 bu:dとかは、擬似的に音を表記しています、学術的に厳密な表記ではありませんので悪しからず。

投稿日 : 2004/02/11(Wed) 22:14
投稿者 Tal
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タイトル Re: 面白い発音の話題ですね
松澤さん、お返事ありがとうございました。
 

> 1 bu:d
> 英国式の発音で、口があまり共鳴しない :の音です。
> 極端に書くと、ブードという感じです。
イギリス式のbirdの母音は中舌(舌の音を作り出す場所がが口の中で中間的な位置で、高さ的にも前後の 位置としても中間的である)で、これがIPAで書くと[b∂:d]になるのではないかと思います。後舌には ならないのでbu:dと書くと後舌、円唇の高母音で発音したくなります。。。

> 2 b :d
> アメリカ式ですが、あまり共鳴・響きが無い∂:です。
> それでも英国式とはずいぶん違います。
これはnon-rhoticの米国東海岸でよく聞く発音の特徴に似ている気がしますが、どうでしょう? IPAでは[b3:d](3はεを逆にした記号です)に近いのでしょうか。

> 3 b :d
> とってもよく響く∂:の発音です。上記2と同じ標記に
> なってしまいましたが、違いは口の響きです。
> アメリカ人的な誇張した音です。
私はおそらくこの方法で発音していると思います。
これが英語音声学でいう[bэ`:d](э`はhooked schwaの音です)でしょうか。

> 4 b: d
> ∂:とrは違う音として発音する方法。
> このCaseは∂:とr1の発音は連続しています。
> カーヴ・ボールのように最後にちょっとだけr1で変化します。
> 発音している本人はひとつの音を発音していると
> 考えています。ただし、下の5のCaseで発音をやって見せた
> あとに、あなたはどっち?と聞いてあげると、「確かに
> 5のように発音しているけど、ひとつの音。」
> なのだそうです。
これはおそらくIPAで言う[b3э`d]の音ではないでしょうか。中舌で少し舌寄りの母音[3](あいまい母音 schwaの[∂]を少しはっきり発音したような音です)のような音から盛り上がり舌母音の[э`]への二重母音です。 この発音は音声学の授業で一応扱いましたが、一度も聞いたことがないのですが、4、または5の方法で 発音している音声が聞けるものは何かありませんか?

> 5 b d
> :と は連続しているけど別の音。
> たいていの場合本人は自覚して :と の音を発音している。
> 英和辞典の発音記号はほとんどがbird[b :rd]としていて、
> しかもrはイタリック体です。
日本の英和辞典の発音記号で使われる[ :r]というのは IPAの音声記号とは違ったものだと思っていましたが。。。イギリスでの[b :rd]と、 イタリックのrで書かれているのは[α:r]や[⊃:r]などのように、本来盛り上がり舌母音である[э`]の 音を便宜上、英・米両方の音声を表記するために簡略表記したものだと思っていたのですが、どうなのでしょうか?

> 私の「発音バイエル」では上記5の発音方法を表現しようと
> しています。その心は、
> 2つの音という意識を持ってもらうことにより、
> You areのare弱形[∂r]が2つの音、
> your[ju ]が3つの音と意識して 発音練習ができるようになる
> からです。
しかし、you're, yourなどにある、[∂r]のrの記号で書かれる部分はあくまで母音ですよね?(盛り上がり舌、 またはそり舌母音の[э`]であるはずです。)ratなどにある子音のrは接近音、半母音など様々な 名称がありますが、米語では移行音、半母音で[j]などと同じ音に分類される子音ですよね。 半母音という名称から母音のような発音をイメージするようなことが書いてある発音本がありますが、 [j],[w],[r]は音節を形成することはできず、その後に移行後の母音がないと現れないので、 響きが母音に似ている子音です。

>MITが何年もの間、定義しようとしていますが、いまだに成功して
>いません。MITのLinguisticsの教科書では、人により発音が異なる
>ためにNon English Speakerはインストラクターの発音に従うように
>とだけ記されています。
MITでは分かりませんが、International Phonetic Associationでは盛り上がり舌母音、またはそり舌母音として定義されてるはずなのですが。。。hooked schwaの一種として分類される、中舌母音になっています。

Sinkaさん、
>でもやはりよく分かりませんね、ほとんど同じ音で、舌や喉の使い方も同じ、それなのに 母音と子音と区別する[э`]とrの怪・・。あまり例としてはよくないでしょうが、日本語で云う 「おとうさんを」「わたしは」の語頭の「お」「わ」と尾部の「を」「は」のような違いの感じで しょうか?同じ様な音だけれども、使う場所が違うというような・・。ちょっとそれとも違う 感じですね・・、ふーむmmm。
えーと、rはその後に母音が来ないと現れない子音ですよね。例えばstraightのように次に母音が 来るstr-などのような子音連続はありえても、srt-という子音連続はありません。米語ではrは [э`]に当たる半母音と考えてもらうといいです。つまり、[r]と[э`]の関係は[j]と[i:]の 関係と似ている、と思っていただけるといいと思うのですが。。。
yeastの発音が[ji:st]で、[ji:]の部分がややこしいのと同じで、mirrorのように([mirэ`])、 [r]と[э`]が連続しているのもyeastと同じコツがいります。
つまり、"お"と"を"の違いというよりは[j]と[i:]の関係に似ている、 と思っていただけるといいと思うのですが。[j]の音と[i:]の音も単体で聞くと似ています。

>Kazさん
>[∂r]の発音しかできない人
これは音を使う場所のコントロールの問題ですよね。[ : ]を発音できることと、その音を正しい場所で使うことができることは別の問題で、 正しい場所に使うにはいつその音が出てくるかわかって いなければいけませんので。これを音声学でhyper-correction(過剰修正)と呼ぶことがあり、 外国語を学ぶ際、母国語にない音の対立があった場合、母国語にない方のペアを過剰に使って しまう傾向がありがちだ、というものです。結構これは深刻な問題で、例えばshillingを"silling" ;のように言ってしまう人は結構多いですよね。vを覚えるとbもvのように発音してしまったり することも、hyper-correctionの一例です。

Case 5はTalさんが言う -ar, -orからのhyper-correctionの一例だと思います。

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